医院開業コンサルタント
井上 洋
医療を専門としたコンサルティングを行なう。メディックス総合研究所取締役。
医院開業!まず最初の悩みとは・・・?
vol.1では、セミナーのアンケートから垣間見る「開業をお考えの医師像」について述べましたが、vol.2では、具体的にドクターからのご質問を紹介します。
医院開業の準備をしていくにあたり、ドクターにとって高いハードルとなるのが、『立地選定』『資金調達・資金計画』『スタッフ採用(人事労務)』です。中でも医院開業にあたって、第一関門となるのは、立地選定及び物件選定です。開業形態には様々ありますが、戸建医院開業にしてもテナント医院開業にしても、開業地の選定には、どのドクターも大変ご苦労をされているようです。
確かに、年々増加する医院開業件数と既存医院のことを考えると、「果たしてどこで開業をすれば成功する医院をつくることができるのだろうか?」という悩みが生まれ、いざ、医療物件探しをしてみても、既存医院と遜色の無い認知度の高い物件に巡り合うことができないと感じているドクターも多いのではないでしょうか?実際に当社の開業支援セミナーや個別相談会でも、「インターネットで不動産情報の検索をしてみたり、薬局や建設会社、不動産仲介会社など様々なところに声をかけても、なかなか思った通りの物件紹介を受けることができない」と仰るドクターに多数お目にかかります。しかしながら、ここで一つの疑問が生まれてきます。果たして『良い医療物件』とはどのような物件なのでしょうか?本当に『良い医療物件』と巡り合うことができないから物件選定の決断をすることができないのでしょうか?
多くの医院開業をお手伝いしてきた経験から鑑みて、医療物件の選定が進まない理由は他にあると断言できます。ではここで、よい物件にめぐり合えないから決まらないと言われるドクターの質問をもとに、第一関門である立地選定・物件選定を成功させるコツを紹介しましょう。
漠然とした考えでは前に進むことはできない!
「医院の開業場所は駅に近い方がいいのですか?それとも住宅地でも問題ありませんか?」「今、住んでいるところは気にしないで、どこでもいいので、交通便利で、人が集まる良い物件はありませんか?」
開業相談において、このような質問が最も多い割合を占めます。お気づきのように、このような漠然としたお考えでは、例え良い医療物件がでてきたとしても、なかなか決断に至ることはできないでしょう。せっかく忙しい時間の合間を縫って物件の検索をしても、悪戯に時間だけが過ぎていくことになります。
もう一度、冷静に考えてみてください。既に開業をしている医院のすべてが、今、開業物件を探している先生方ご自身が思い描いているような場所や建物で診療をされているでしょうか?よい場所だから成功できているのでしょうか?
物件選定!ハードルを突破するためには!
まず、ドクターご自身が求める「患者さん像」をよく考えてください。それから、自分のクリニックが患者さんに提供できる医療について整理をしてみてください。求める患者さんがはっきりとしてくれば、おのずとどのような場所で開業をしたら自分の求める医院に近づくことができるのかをはっきりとしたイメージとして捉えることができるようになります。
但し、それだけで患者さんが多数来院をして必ず成功する物件にめぐり合えるというものではありませんが、自院のコンセプトを決めた上で、要領よく物件紹介の依頼をすることで、ある程度ご自身のお考えに近い物件にめぐり合う可能性は、確実に高くなります。ご自身のお考えや思いをきちんと伝えた上で紹介をされた物件のなかで、ご開業物件として申し分ないと思えるものに巡り合えた際には、開業予定の標榜科目や提供医療の内容を前提として、実際の診療圏の把握や人口数、既存医院のことなど、科学的なアプローチにより分析を行った上で、物件確定のご判断をしていくべきかと思います。
漠然としたままでは、なかなか前には進まないものです。このようなことを今一度、整理していただくことで、物件選定への道のりがずいぶん平坦になることでしょう。
【資料1 アンケート調査「希望開業形態について」】
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